あいちゃんずでいず

あいちゃんとゆかいな仲間たち(男子も既婚者もいます)婚活、お見合い、恋愛に役立つブログを更新していきますね。真面目なお話からくだらないお話まで付き合ってください。

マスコミ業界勤務の彼女



即日完売
投資家諸君。口は災いの元である。何気ない一言が、大事なデートを台無しにしてしまうこともある。私はその日、夕刻に差しかかり混み始めた幹線道路を避け、並行する裏道をゆっくりと運転していた。夕焼けが街を染める、秋の東京で最もロマンチックな時間帯だ。助手席には少しばかり気が強く、そして美しくインテリジェンスの高い女性を乗せている。クルマで流しながら彼女の新居を探していたのだ。最近この辺りは立て続けに高規格なマンションが建築され、その多くは落成前に全室が完売している。人気の高いエリアなのだ。右側に比較的小振りのマンションが見える。壁面には、周辺の瀟洒な雰囲気とは明らかに不釣り合いなデザインの「即日完売御礼」の垂れ幕が掛かっている。私はミサワホームの社長だったチョジーミサワ氏の古い言葉を思い出した。今から10年前、彼は左右の親指と人さし指をせわしなく交差させながら、はためく垂れ幕を一瞥すると「即日完売、ですか。私さん。あれはね、私はバカですとわざわざカネを使って宣言しているようなものですよ」と皮肉に満ちた笑みを浮かべて言った。すぐに売れてしまう物件は設定価格が安すぎる。すなわち高く売れる機会を放棄した間抜けぶりを、自ら臆面もなくさらしている、というわけだ。私はステアリングを切りながら、ミサワ氏の言葉をあたかも自分のアイデアであるような顔をして、彼女に「即日完売、か。間抜けだな」と訳知り顔に言った。「どうしてなの?」彼女は美しい顎を傾けて私に聞くことだろう。そうしたら彼女に、このマンション販売会社の不見識を、昨今の不動産事情を、産業再生機構の支援企業第一陣に同業のダイワ建設が認定された裏事情をレクチャーしよう。離婚したばかりの彼女は、新しい住居を探していて不動産のことで頭がいっぱいのはずだ。半導体セクターだけなく「不動産にも明るいフェルディナント」を見せれば、今回の投資も比較的短期間に回収できるはずだ。完璧である。投資は常に布石を打ちながら進めていくことが重要なのだ。しかし、彼女の言葉は全く予想外だった。「完売のどこがいけないの…」うかつだった。彼女はテレビ朝日に勤務している。テレビ業界に身を置く人間は、誰もが必ず視聴率と(スポンサーに対する)番組の売れ行きを気にするものなのだ。ある番組の販売が売り切れることをテレビ業界で「完売」と表現する。不景気で広告出稿額が減少し続ける昨今、新しい番組で広告枠が売れ残ることもしばしば起こる。テレビウーマンにとって「完売」とは完全な仕事の証し。これを否定することは彼女を否定することに等しい愚行だったのである。


マスコミ業界の彼女と付き合う際の留意点
・時間厳守!ただし彼女の遅刻に関しては肝要に。
・系列のネットワークを理解しておくこと。
・日本のテレビ局は必ず系列の新聞社が存在する、テレ朝の場合は無論朝日新聞だ。別会社とは言え、やはりそこは系列だ。その新聞社の論調に批判的であってはならない。
・相手はマスコミである。政治経済に関しては敏感だ。組閣が実施されたら速やかに全大臣の顔と名前を暗記すること。為替と株の動きもキチンとフォローしておくように。